こんにちは、芦屋のうちで法務事務所 代表司法書士の向井亜希子です。
あっというまに4月半ばに差し掛かり、わたくし事ですが、30代最後の1年となりました!
さて、本日のブログも前回までに引き続き、民法改正について説明します。
★ザックリ解説★
所有者がわからない土地や、管理が悪い土地について、裁判所が管理人を選任することができるようになります!それによって、土地の活用が推進されることが期待されます。
もう少し詳しく説明していきますね。
所有者不明土地管理制度
所有者不明となっている不動産について裁判所が管理人を選任する制度です。
所有者不明土地とは、「登記記録では所有者がわからない(もしくは所有者に連絡がつかない)土地」のことです。誰かが、その土地を買い取って活用しようとしても、所有者不明土地は売ることができないので、不動産活用が困難になるといった問題が発生していました。
そこで、管理人を選任して、土地の活用につなげよう!という制度なんですね。
民法改正前にも、管理する方がいない不動産について、「不在者財産管理制度」や「相続財産管理制度」といった、管理人を選任する制度はありました。
しかし、それらは、その「不在者」や「被相続人」の所有するすべての不動産を管理する制度です。特定の不動産の問題のみを解決したい場合には、全財産を管理する必要はありません。結果、現行の制度では管理人の負担も大きく、管理する期間も長くなってしまうというデメリットがあります。
今回の改正により、従来の管理制度が必要なとき、新設の管理制度が良いとき、と使い分けることができるようになりました。
また、従来の制度は、所有者を全く特定できない不動産については対応することができません。
今回新設された、所有者不明土地管理制度は、そのような場合でも対応ができるのも大きなメリットだと言えるでしょう。
◇所有者不明土地管理制度の手続き
① 申立て
まずは、不動産所在地を管轄する地方裁判所へ申立てを行います。
ただし、誰でも申立てが可能というわけでなく、申立権者は所有者不明土地等の管理についての利害関係人及び地方公共団体の長等に限られています。なお、利害関係人については「公共事業の実施者など不動産の利用・取得を希望する者」や「共有地における不明共有者以外の共有者」などが想定されています。
また、申立ての際、申立人である利害関係人は予納金を支払う必要があります。自分の土地でもないのに、予納金を支払うというのは納得いかないところもあるかもしれませんが、これは不動産管理に必要な費用を確保するためで、予納金がないと税金で管理費用を賄うことになってしまうため、やむを得ないというところです。
② 異議申立期間の公告
その後、裁判所は当該不動産について、所有者不明土地管理制度の申立てがされた旨や異議を届け出ることができる旨を公告します。異議を届け出ることができる期間は1カ月以上の期間が定められます。
③ 管理命令の発令・管理人選任
裁判所が所有者不明不動産について管理が必要と認めた場合、管理人が選任され、管理命令が発せられます。なお、管理者は事案に応じて弁護士や司法書士、土地家屋調査士などの法律専門職が選任されることが想定されています。また、当該不動産の登記簿には管理人が選任された旨が登記されます。
管理人の権限
管理人の権限は、不動産のみならず、不動産にある動産にも及びます。
管理人は管理はもちろんのことですが、裁判所の許可を得れば不動産を売却する、建物であれば取り壊すなどの処分をすることもできます。
他にも不動産を不法に占拠する者がいた場合の明け渡し請求なども管理人が原告として行うなど、訴訟の当事者となります。
管理不全土地管理制度
次は、所有者が不明ではないけど、管理が悪い土地問題の解決策です。
所有者による適切な管理が行われていないために、近隣に悪影響や危険を生じさせているまたは生じさせるおそれがある不動産について、裁判所が管理人を選任する制度です。
これまでは、管理不全の不動産のために被害を被っている方は、裁判で所有者を訴え、勝訴したうえで強制的に管理させるしかありませんでした。さらに、それでも所有者がかたくなに管理を行わなければ、どうしようもありませんでした。
一方、今回創設された管理不全土地管理制度では裁判所が管理人を選任するため、確実な管理が期待でき、危険や被害を除去することができると思われます。
◇管理不全土地管理制度の手続き
所有者不明土地管理制度と同じく、利害関係人等からの申立て及び予納金の納付から始まります。なお、管理不全土地管理制度では「倒壊のおそれがある建物の隣地を所有している者」や「管理不全不動産により被害を受けている者」などが利害関係人として想定されています。
また、その後は異議申立期間の公告ではなく、所有者への陳述の聴取が行われます。聴取後、裁判所の判断により管理人が選任され、管理命令が発せられます。管理人は所有者不明土地管理制度と同じく弁護士や司法書士等の法律専門職が想定されています。
※所有者不明土地管理制度とは異なり、管理人の選任に関する登記はされません。
管理人の権限
権限管理不全土地管理制度における管理人も当該不動産を管理する権限があります。
ただし、管理不全土地管理制度における管理行為は「擁壁の補修工事」や「ゴミの撤去・害虫の駆除」が想定されています。裁判所の許可を得ることにより、売却などの処分を行うこともできますが、所有者の同意も併せて必要となります。
また、所有者不明土地管理制度と異なり、管理不全土地管理制度の管理人は、当該不動産に関する訴訟では当事者にはなりません。当事者は所有者となります。
まとめ
いかがだったでしょうか。
管理の悪い土地で困っている方は、ぜひ一度専門家に相談してみてくださいね!